イロノココロ。

カラー(色)が人の行動や心理に与える力と、それをデザインに活用するための方法についてご紹介しています。

色にだまされる

今日はクイズです。

COLORSの下地の色は何色に見えますか?




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人によっても少し差はあると思いますが、C、L、Rは少し青みがかったグレイのような色、O、O、Sは黄緑に見えますでしょうか?



上のラインだけを抽出します。こんな色みです。


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そしてそのライン部分を除去しました。




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そうです。実は全く同じ若草色なんです。

もう一回クイズの画像です。


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不思議ですよね。



これは色の対比というものから起こる「見え方」の差が原因になっています。実際の色ではなく「色覚と脳が処理した色」と言うこともできるかもしれません。

ラインの色を無彩色の白にすると全て同じ緑に見えます。

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下の矢印をみてください。ちょっと色がきつくてギラギラすると思うので、あんまり長く見つめないでください。


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赤と緑の境目にグレイのほわっとした部分があります。人によっては色の境目に黒っぽいラインが見える人もいると思います。


赤の下地を取り去ります。

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グレイのもやもやも、黒い線も存在していません。

赤の下地と緑の組み合わせで見えていたもやもやは、「ハレーション」といって強い色同士の補色関係の時に起こる現象です。


クイズ問題の下地の色が違って見えたものはこの現象が起こって、下地の色を変化させていました。

これを防ぐには彩度の強い補色同士を並べないような配色を心がけるか、どうしても必要な場合はどちらかの色の彩度を落としてあげることで解決できることが多いです。


 

補色について:



下の環はデザインをしたことが無い方も何度か見たことがあるかと思いますが、色相環と呼ばれ、色の並びと関係性を表したものです。

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それぞれの色の対面にある色同士は「補色」といい、反対の性質を持つ色同士になります。例えば一番上の黄色の補色は、反対側の真下にある青紫になります。



今回の文字のラインを色相環に置いて見てみます。

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色味が変わって見えなかったオレンジと緑の組み合わせは補色ではありませんでした。

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緑が青みがかったグレイに見えてしまった紫よりのピンクと緑は、まさに補色の関係でした。

そしてどちらも鮮やかな色味なのでハレーションが起こってしまい、その結果、違った色に見えてしまったのです。元々の色は同じなのに、色を見る私達の色覚細胞と、それを色として私達に知覚させる脳の機能によって起こった現象です。

このブログのタイトルは「色にだまされる」としましたが、実際には「色覚と脳にだまされて」しまっていたのでした。


補色にはこういった問題もありますが、本質的にはそれぞれの色の性質を際立たせる関係同士でもあるので、意図的に使うと鮮やかさが増します。


青だけをメインに作ったポスターです。素敵な色合いですが、少し地味で大人しい印象かなと思います。

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補色の黄色みを加えてみました。

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色あいに動きが出てきたかと思います。



また心理的残像といってある色を長く見つめると、その色の補色の残像が浮かぶため、それを用いて食品のパッケージなどに用いて、より美味しく見えるような効果を狙うこともあります。

牛乳のパッケージには青がよく用いられていますが、それは青の補色である「黄色」の心理的残像によって、牛乳の白が少しクリーム色がかって見え、より濃厚に感じられるからだと言われています。

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配色を考えるときに、人間のこんな生理的な現象も考慮しながら、より良い結果を求めていきたいです。


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